真夜中にハーブティーを、あなたとふたりで
「同じ模様が出たら、ふたりの相性は最高らしい」
「模様の種類はいくつあるの?」
「えーと。十種類だったかな」
「……ってことは同じ模様が出る確率は一パーセント?」
単純に十掛ける十をした私を、隼人くんが胡乱な目で見る。
「香帆さん、数学苦手でしょう。Aが十枚の絵からひとつを選ぶ確率は十分の一。その絵をBが手持ちの十枚から引くわけだから確率は十パーセントだよ」
おぉ。なんだかそんな問題を学生時代に解いた気がする。
私が感心していると、隼人くんは得意げに口角を上げた。
「でも、香帆さんみたいに考える人は多いと思う。だから模様が一緒だと奇跡だって余計に嬉しいんだろうな」
「冷静な分析ね。さては理系でしょう」
「ガチの理系。国語は無理。だから香帆さんが考えるキャッチフレーズを見て、いつもすごいなって感心している」
「似たような仕事をしていた時期があるからね。商品の紹介を五十文字で考えなくてはいけないの。いかに簡潔に読んだ人の印章に残るか、頭を悩ませたなぁ」
隼人くんは顔を顰め「俺には無理~」と手を上にする。
お手上げのポーズを取る隼人くんに、さっきのおみくじで気になったことを聞く。
「でも、違う模様が出る可能性は高いよね。恋人同士で引いて違う模様になったら気まずくない?」
「そこはちゃんとフォローがされているんだな。神社のホームページに、模様の組み合わせごとのアドバイスが載っているんだ。さらに、手水鉢の横にある箱に二つ重ねて奉納すれば、OKってことになっている」
「軽っ」
いいの、それで。まぁ、おみくじだし許されるのかも。
それがSNSで話題になって、この神社に遠方から来る人もいるとか。
お祭りが私の記憶より賑わっているのも、そのSNSのおかげらしい。
話しているうちに、神社の前まできた。
せっかく来たのだからと手を合わせ、そのあとはおみくじを引くことに。
「お雛様の着物の柄が少しずつ違う。手が込んでいるね」
「お内裏さんも持っている笏の形が微妙に違う。っていうか、身体に対して扇と笏が大きくないか?」
隼人くんが首を傾げる。それは多分、浮き上がる模様が見やすいようにするためだ。もしくは細かな模様を印字できなかったから、扇と笏を大きくするしかなかったのかも。なんとなく後者な気がする。
そんな罰当たりなことを考えながら、私は桜柄のお雛様を選ぶ。隼人くんもお内裏様をひとつ手にした。
流れるようにここまで来たけれど、本来これは恋人同士の相性を知るためにするものだ。
加藤くんの「デート」の言葉が再び思い出され、妙に意識をしてしまう。
もし相性が最高なんて出たら、どうしよう。
素直に喜ぶべきなのか。それとも冗談として笑って流すのがいいのか。
いまだに自分の気持ちがはっきりしないのが、もどかしい。
隼人くんが嫌いなわけじゃない。
悠磨に二股をかけられ婚約寸前で破局したせいで、再び誰かと恋をするのが怖い。
あと何回失恋と恋を繰り返さなくてはいけないのか。
いつか結婚をしたい。次に付き合う人とは将来を見据えた関係を築きたい。
隼人くんは真剣に付き合ってくれるだろうけれど、結婚はまだ考えられないと言っていた。
仕事も不安定で将来も未定、そんな隼人くんとの恋に躊躇してしまうのは、私の年齢なら当然だと思う。
心の端で、「浮気ぐらい」と言った母の顔がよぎる。
どうするのが正解なのだろう。
正解のない問いは、私の決断を余計に鈍らせる。
「あっ、あそこに手水鉢があるんじゃないかな。ほら、人が沢山いる」
「模様の種類はいくつあるの?」
「えーと。十種類だったかな」
「……ってことは同じ模様が出る確率は一パーセント?」
単純に十掛ける十をした私を、隼人くんが胡乱な目で見る。
「香帆さん、数学苦手でしょう。Aが十枚の絵からひとつを選ぶ確率は十分の一。その絵をBが手持ちの十枚から引くわけだから確率は十パーセントだよ」
おぉ。なんだかそんな問題を学生時代に解いた気がする。
私が感心していると、隼人くんは得意げに口角を上げた。
「でも、香帆さんみたいに考える人は多いと思う。だから模様が一緒だと奇跡だって余計に嬉しいんだろうな」
「冷静な分析ね。さては理系でしょう」
「ガチの理系。国語は無理。だから香帆さんが考えるキャッチフレーズを見て、いつもすごいなって感心している」
「似たような仕事をしていた時期があるからね。商品の紹介を五十文字で考えなくてはいけないの。いかに簡潔に読んだ人の印章に残るか、頭を悩ませたなぁ」
隼人くんは顔を顰め「俺には無理~」と手を上にする。
お手上げのポーズを取る隼人くんに、さっきのおみくじで気になったことを聞く。
「でも、違う模様が出る可能性は高いよね。恋人同士で引いて違う模様になったら気まずくない?」
「そこはちゃんとフォローがされているんだな。神社のホームページに、模様の組み合わせごとのアドバイスが載っているんだ。さらに、手水鉢の横にある箱に二つ重ねて奉納すれば、OKってことになっている」
「軽っ」
いいの、それで。まぁ、おみくじだし許されるのかも。
それがSNSで話題になって、この神社に遠方から来る人もいるとか。
お祭りが私の記憶より賑わっているのも、そのSNSのおかげらしい。
話しているうちに、神社の前まできた。
せっかく来たのだからと手を合わせ、そのあとはおみくじを引くことに。
「お雛様の着物の柄が少しずつ違う。手が込んでいるね」
「お内裏さんも持っている笏の形が微妙に違う。っていうか、身体に対して扇と笏が大きくないか?」
隼人くんが首を傾げる。それは多分、浮き上がる模様が見やすいようにするためだ。もしくは細かな模様を印字できなかったから、扇と笏を大きくするしかなかったのかも。なんとなく後者な気がする。
そんな罰当たりなことを考えながら、私は桜柄のお雛様を選ぶ。隼人くんもお内裏様をひとつ手にした。
流れるようにここまで来たけれど、本来これは恋人同士の相性を知るためにするものだ。
加藤くんの「デート」の言葉が再び思い出され、妙に意識をしてしまう。
もし相性が最高なんて出たら、どうしよう。
素直に喜ぶべきなのか。それとも冗談として笑って流すのがいいのか。
いまだに自分の気持ちがはっきりしないのが、もどかしい。
隼人くんが嫌いなわけじゃない。
悠磨に二股をかけられ婚約寸前で破局したせいで、再び誰かと恋をするのが怖い。
あと何回失恋と恋を繰り返さなくてはいけないのか。
いつか結婚をしたい。次に付き合う人とは将来を見据えた関係を築きたい。
隼人くんは真剣に付き合ってくれるだろうけれど、結婚はまだ考えられないと言っていた。
仕事も不安定で将来も未定、そんな隼人くんとの恋に躊躇してしまうのは、私の年齢なら当然だと思う。
心の端で、「浮気ぐらい」と言った母の顔がよぎる。
どうするのが正解なのだろう。
正解のない問いは、私の決断を余計に鈍らせる。
「あっ、あそこに手水鉢があるんじゃないかな。ほら、人が沢山いる」