真夜中にハーブティーを、あなたとふたりで
 隼人くんが指差す先には、神社の前よりも大勢の人がいた。
 皆、手には人形型のおみくじを持っている。
 列に並び、前の人がどうするかを首を伸ばして見ているうちに、思ったよりも早く順番がきた。
「扇が見えるように上にして入れればいいのよね?」
「うん。せーので入れよう」
 隼人くんのせーので一緒に水に入れる。
 待っていると、扇と笏に桜の花が浮かんできた。
「見て、同じ柄だよ!」
「すげぇ。本当だ」
 人型のおみくじを水から取り出す。ぼとぼとと雫が落ちるそれをハンカチで挟んで水気をとった。
「確率何パーセントだったっけ?」
「一パーセント?」
「嘘、隼人くんさっき十パーセントって言ったよ」
 指摘すれば、「覚えていたか」と苦笑いをする。
「香帆さんの間違いを訂正しなければよかったな」
「どうして?」
「だって、そのほうが運命って感じが増さない?」
 その言葉に、胸が高鳴る。
 隼人くんが私を見つめる目が甘くて、直視できない。
 戸惑う私に気づいたのか、隼人くんはあっけらかんと「腹が減った」と言った。
「それじゃ、食べにいこう。実は私、すごくお腹がすいているの。お客様のところへ謝罪に行くと思うと、緊張でお昼はあまり食らべれなかった」
「じゃ、たこ焼きとか、から揚げ、フランクフルト、焼きそば、そのあたりはどう?」
 隼人くんの提案に、首を大きく縦にして答える。と、同時に私のお腹がなった。
「うわっ、いい返事だな」
「もう! 聞かなかったことにして」
「いや、その音量は無理だよ」
 すっと手が握られた。
隼人くんは「なにが売っているかな」と言いながら、階段を降りる。
 そうしてさっき隼人くんが言った食べ物を全部買った私たちは、神社の裏側へと回った。
 商店街の喧騒から離れたそこは小さな空き地になっていて、古いベンチが数個置かれているだけの、なにもない場所だ。
「こんな場所、よく知っていたね」
「地元民だから」
 ふたりでさっそく食事に取りかかる。
残念ながらここからは木が邪魔をして花火がよく見えないから、打ち上げの時間になったら移動しなくてはいけない。
 たこ焼きを食べながら、少しずつ足の痛みが酷くなってくるのを感じる。階段から落ちた時に捻った箇所だ。
 TUKUYOMIからここまで歩く間もじんじんと痺れるような痛みはあった。 
 でも歩いているうちに麻痺してきて、大丈夫だと思っていたんだけれど。
 隼人くんに見つからないようにそっと右足首に触れると、少し熱を持っていた。
 ちょっと足を捻っただけだと思って歩き回ったのが裏目に出たようで、症状を悪化させてしまった。
 ま、暫く休んでいたら戻るだろう。
 そんなことを考えながら、話題は来年の夏まつりにTUKUYOMIが出店するかに変わっていった。
「あっ、もしかして私、今の商店街組合長の子供と同級生かも」
 ふと隼人くんが口にした商店街組合長の苗字に聞き覚えがあった。少し変わった苗字で、聞けば私と同じ年齢の娘がいるという。
「多分、中学校が一緒だった友達のお父さんだと思う。彼女のお父さんも商店街でお店を出していたし。よければ、彼女に連絡を取ってみようか?」 
 中学のとき同じテニス部だった。連絡先も交換していたはずだ。
 てっきり喜んでくれると思っていたのに、隼人くんはちょっと困ったように首を振る。
「今のタイミングだと、やめた方がいい気がする」
「どうして? なにかあったの?」
「うーん。ちょっと調べたら分かることだから言っちゃうけれど」
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