真夜中にハーブティーを、あなたとふたりで
「俺、初めて会ったときに結婚はまだ考えていないって言ったけれど、それは結婚したくないってことではなくて、今の自分に自信が持てないからなんだ。年末にいろいろあって、会社を辞めて、どういう仕事の仕方をしようかと悩んでいる」
「うん」
短く相槌を打つと、隼人くんは視線をしっかりと私に向けた。
「だからと言って、いい加減な気持ちで付き合いたいと思っているわけではないから。付き合うなら真剣に、ずっと一緒にいられる人がいいと考えている。二股なんてしないし、お互いを尊重しながら楽しく過ごせたらいいなと思う」
隼人くんが私への想いを口にするのは、これが初めてではない。
でも今までは、彼なりにどこか逃げ道を作っているようないい方だった。
だけれど、今回は違う。まっすぐにありのままの想い全部を私に話してくれている。
「ありがとう。嬉しい」
「よかった。返事はゆっくりでいいよ。今は仕事も忙しそうだし、一段落したら考えて欲しい。でも今夜、これだけは言おうと思っていたんだ」
「もしかして若菜が隼人くんに、結婚について聞いたことに関係している?」
私の問いに、隼人くんはバツが悪そうに頭を搔いた。
「うん。あのタイミングで結婚の質問だったから、香帆さんが不安に感じているのかなと。だから、早いうちに不安の目は摘んだほうがいいと思って、言った」
そうなんだ、と思うと同時に顔が赤くなる。
多分、私は隼人くんに惹かれている。
一緒にいると気持ちが安らぎ、落ち着く。
ただ、真剣に思いを伝えてくれたからこそ、落ち着いた状況で自分の気持ちを確認したい。
なんとなくの流れで付き合うのは、嫌だ。
隼人くんが私にくれた言葉と同じだけのものが、自分の中にきちんとある。そう実感してからお付き合いを始めたいと思った。
「あっ、そろそろ花火の時間だ。香帆さん、足大丈夫? さっきから痛そうな歩き方をしてたよな」
「えっ、気づいていたの?」
「そりゃ、気づくだろう。隣を歩いていて気づかなかったら、そいつはでくの坊だと思っていい」
じゃ、悠磨はでくの坊決定だな。
絶対気づかなさそうだもん。
「ここから花火は見えないのかな」
と隼人くんが空を見上げる。
「うーん。木が邪魔をするから、上半分ぐらいしか見えないと思う」
「じゃ、ここから見る? それとも移動する?」
この人は、優しいなとつくづく思う。
花火はお祭りのフィナーレを飾る。それを半分見えない場所からでもいいと言うのだ。
「隼人くんさえよければ、ここが助かる」
「いいよ。半分見れたら充分雰囲気を楽しめる。それにここは人が少ないからね」
「人混みが嫌いなタイプ?」
「どちらかと言うと嫌いだけれど、今の発言は下心ありかな」
そう言って、隼人くんは私の手を握って、顔の高さまであげた。
繋がれた指に、顔がどんどん熱くなっていく。
「意外。てっきり草食系男子だと思った」
「さぁ、どうなんだろう」
隼人くんは、悔しいほど色気のある顔で口角を上げた。
その顔を、花火の灯が照らす。次にドンとお腹に響く音がした。
「あっ、始まったみたい」
「おっ、思ったより見える。ここ、穴場なんじゃないか」
今度は屈託のない顔で、空を見上げる。
ころころ変わる表情が見ていて飽きない。
半分しか見えない花火を楽しめる隼人くんの隣は、肩の力が抜けてとても居心地がいい。
そんなことを思いながら、私も花火を見上げた。
商店街から実家までは徒歩十五分、バス停へ行くには大回りをしなくてはいけない。
「うん」
短く相槌を打つと、隼人くんは視線をしっかりと私に向けた。
「だからと言って、いい加減な気持ちで付き合いたいと思っているわけではないから。付き合うなら真剣に、ずっと一緒にいられる人がいいと考えている。二股なんてしないし、お互いを尊重しながら楽しく過ごせたらいいなと思う」
隼人くんが私への想いを口にするのは、これが初めてではない。
でも今までは、彼なりにどこか逃げ道を作っているようないい方だった。
だけれど、今回は違う。まっすぐにありのままの想い全部を私に話してくれている。
「ありがとう。嬉しい」
「よかった。返事はゆっくりでいいよ。今は仕事も忙しそうだし、一段落したら考えて欲しい。でも今夜、これだけは言おうと思っていたんだ」
「もしかして若菜が隼人くんに、結婚について聞いたことに関係している?」
私の問いに、隼人くんはバツが悪そうに頭を搔いた。
「うん。あのタイミングで結婚の質問だったから、香帆さんが不安に感じているのかなと。だから、早いうちに不安の目は摘んだほうがいいと思って、言った」
そうなんだ、と思うと同時に顔が赤くなる。
多分、私は隼人くんに惹かれている。
一緒にいると気持ちが安らぎ、落ち着く。
ただ、真剣に思いを伝えてくれたからこそ、落ち着いた状況で自分の気持ちを確認したい。
なんとなくの流れで付き合うのは、嫌だ。
隼人くんが私にくれた言葉と同じだけのものが、自分の中にきちんとある。そう実感してからお付き合いを始めたいと思った。
「あっ、そろそろ花火の時間だ。香帆さん、足大丈夫? さっきから痛そうな歩き方をしてたよな」
「えっ、気づいていたの?」
「そりゃ、気づくだろう。隣を歩いていて気づかなかったら、そいつはでくの坊だと思っていい」
じゃ、悠磨はでくの坊決定だな。
絶対気づかなさそうだもん。
「ここから花火は見えないのかな」
と隼人くんが空を見上げる。
「うーん。木が邪魔をするから、上半分ぐらいしか見えないと思う」
「じゃ、ここから見る? それとも移動する?」
この人は、優しいなとつくづく思う。
花火はお祭りのフィナーレを飾る。それを半分見えない場所からでもいいと言うのだ。
「隼人くんさえよければ、ここが助かる」
「いいよ。半分見れたら充分雰囲気を楽しめる。それにここは人が少ないからね」
「人混みが嫌いなタイプ?」
「どちらかと言うと嫌いだけれど、今の発言は下心ありかな」
そう言って、隼人くんは私の手を握って、顔の高さまであげた。
繋がれた指に、顔がどんどん熱くなっていく。
「意外。てっきり草食系男子だと思った」
「さぁ、どうなんだろう」
隼人くんは、悔しいほど色気のある顔で口角を上げた。
その顔を、花火の灯が照らす。次にドンとお腹に響く音がした。
「あっ、始まったみたい」
「おっ、思ったより見える。ここ、穴場なんじゃないか」
今度は屈託のない顔で、空を見上げる。
ころころ変わる表情が見ていて飽きない。
半分しか見えない花火を楽しめる隼人くんの隣は、肩の力が抜けてとても居心地がいい。
そんなことを思いながら、私も花火を見上げた。
商店街から実家までは徒歩十五分、バス停へ行くには大回りをしなくてはいけない。