真夜中にハーブティーを、あなたとふたりで
「書かれていません。店長、ふたりの結婚式がいつか分かりますか?」
「今日よ。早野さんはティアラの予約をしたことがなかったわよね。分からなかったら誰かに聞くと思っていたのだけれど」
教育担当の井上さんが、難しい顔で「そういえば」と言った。
「あの日、とても忙しかったんです。彼女がティアラをお客様に説明しているのは聞いていたので、予約の仕方が分かっているか気にはなっていたんです。四月に教えましたが、今まで実際に予約をしたことはなかったから、覚えているか微妙だなと心配していました」
「早野さんから質問はされた?」
「いいえ。、私も立て続けに接客をしていましたから。もしかして彼女、あとから聞こうと思って忘れたのかも知れません。さすがに故意ではないと思うのですが……」
当然、ティアラの予約作業はすぐにしなくてはいけない。
そうでないと、他店とダブルブッキングしてしまうからだ。
「木村さん、他店は何日にティアラを予約したか分かりますか?」
「八月十一日ですね。予約の仕方が分からなければ、聞いてくれたらよかったのに」
つまり、八月十日に早野さんがきちんと予約をしていれば、ダブルブッキングにはならなかった。
忘れるからメモを取るようにと、あれほど行ったのに。
苛立つ気持ちを押さえ、軽く深呼吸をする。今はどうやってこの場を切り抜けるかを考えなくては。
「今、ティアラがある結婚式場と、使用される時間は分かりますか?」
「結婚式場は分かるのですが、式の時間までは」
画面を確認すると、結婚式場は北区だった。
本社によると、長渕様が結婚式を挙げられる式場は千葉のU市にある。千葉といっても東京と隣接しているから、それほど遠くない。
「ふたつの式場の距離はあまり離れていないから、私がティアラを運べば間に合うかもしれない。木村さん、北区の結婚式場に連絡して、式が何時に終わるか聞いてください。私はU市の式場に結婚式の開始時間を確認します」
ふたりで手分けをして、それぞれの式場に電話をする。
その間に井上さんは、売り場へ出て行った。
今の状況を他の販売員に伝えてくれているのだろう。
案の定、すぐに戻ってくると、今度は北区の結婚式場からU市までの乗り換えを調べてくれる。
「店長、北区の結婚式場と連絡が取れました。式は三時に終わりますが、そのあと新郎新婦によるお客様のお見送りがあります。お見送りには三十分の時間を取っていますが、場合によっては長引く可能性もあるそうです」
木村さんはそれだけではなく、式が終わり次第、私がティアラを取りに伺ってもいいかを確認してくれていた。特に問題ないとの返答だ。
「長渕様のお式は五時。井上さん、移動時間を調べてくれているのよね?」
スマホの画面を操作している井上さんに声をかけると、最寄り駅間の移動は約一時間だと答えてくれた。
私は手にしているスマホで北区の式場を調べる。
「最寄り駅からそれぞれの式場への移動は……北区の式場からは徒歩五分。U市は」
「徒歩十分です」
木村さんがすかさず教えてくれる。
あまりにも返答が早く、調べた様子がないので不思議に思っていると、木村さんはちょっと照れくさそうに笑った。
「実はU市の式場は、私が半年後に結婚式を挙げる場所でもあるんです」
「えっ、木村さん結婚するんですか⁉ 初耳です。しかもこのタイミングで? おめでとうございます」
井上さんが驚きながら祝福すると、木村さんは「皆には落ち着いてから話すね」と苦笑いをした。
「今日よ。早野さんはティアラの予約をしたことがなかったわよね。分からなかったら誰かに聞くと思っていたのだけれど」
教育担当の井上さんが、難しい顔で「そういえば」と言った。
「あの日、とても忙しかったんです。彼女がティアラをお客様に説明しているのは聞いていたので、予約の仕方が分かっているか気にはなっていたんです。四月に教えましたが、今まで実際に予約をしたことはなかったから、覚えているか微妙だなと心配していました」
「早野さんから質問はされた?」
「いいえ。、私も立て続けに接客をしていましたから。もしかして彼女、あとから聞こうと思って忘れたのかも知れません。さすがに故意ではないと思うのですが……」
当然、ティアラの予約作業はすぐにしなくてはいけない。
そうでないと、他店とダブルブッキングしてしまうからだ。
「木村さん、他店は何日にティアラを予約したか分かりますか?」
「八月十一日ですね。予約の仕方が分からなければ、聞いてくれたらよかったのに」
つまり、八月十日に早野さんがきちんと予約をしていれば、ダブルブッキングにはならなかった。
忘れるからメモを取るようにと、あれほど行ったのに。
苛立つ気持ちを押さえ、軽く深呼吸をする。今はどうやってこの場を切り抜けるかを考えなくては。
「今、ティアラがある結婚式場と、使用される時間は分かりますか?」
「結婚式場は分かるのですが、式の時間までは」
画面を確認すると、結婚式場は北区だった。
本社によると、長渕様が結婚式を挙げられる式場は千葉のU市にある。千葉といっても東京と隣接しているから、それほど遠くない。
「ふたつの式場の距離はあまり離れていないから、私がティアラを運べば間に合うかもしれない。木村さん、北区の結婚式場に連絡して、式が何時に終わるか聞いてください。私はU市の式場に結婚式の開始時間を確認します」
ふたりで手分けをして、それぞれの式場に電話をする。
その間に井上さんは、売り場へ出て行った。
今の状況を他の販売員に伝えてくれているのだろう。
案の定、すぐに戻ってくると、今度は北区の結婚式場からU市までの乗り換えを調べてくれる。
「店長、北区の結婚式場と連絡が取れました。式は三時に終わりますが、そのあと新郎新婦によるお客様のお見送りがあります。お見送りには三十分の時間を取っていますが、場合によっては長引く可能性もあるそうです」
木村さんはそれだけではなく、式が終わり次第、私がティアラを取りに伺ってもいいかを確認してくれていた。特に問題ないとの返答だ。
「長渕様のお式は五時。井上さん、移動時間を調べてくれているのよね?」
スマホの画面を操作している井上さんに声をかけると、最寄り駅間の移動は約一時間だと答えてくれた。
私は手にしているスマホで北区の式場を調べる。
「最寄り駅からそれぞれの式場への移動は……北区の式場からは徒歩五分。U市は」
「徒歩十分です」
木村さんがすかさず教えてくれる。
あまりにも返答が早く、調べた様子がないので不思議に思っていると、木村さんはちょっと照れくさそうに笑った。
「実はU市の式場は、私が半年後に結婚式を挙げる場所でもあるんです」
「えっ、木村さん結婚するんですか⁉ 初耳です。しかもこのタイミングで? おめでとうございます」
井上さんが驚きながら祝福すると、木村さんは「皆には落ち着いてから話すね」と苦笑いをした。