真夜中にハーブティーを、あなたとふたりで
交通渋滞は東京ではよくあるけれど、こうも重ならなくてもいいんじゃない。
車でたった四十分の距離が、果てしなく遠い。
呆然とメッセージの画面を眺める。
上から順に、井上さん、木村さんと続く。その次は、隼人くんだ。
隼人くん、日本橋まで電車で来たのかな。
脳裏によぎったのは、以前に乗せてもらったバイクだ。
そもそも隼人くんがまだ日本橋にいるか分からないけれど、そんなことを考える間もなく私の指は勝手に動いていた。
すぐに返信がきて、出口の番号が表示される。続けて『そこで待っていて』とあった。
地上への階段を駆け上がると、すぐ近くに隼人くんとバイクが見えた。
「隼人くん!」
「乗って」
言葉と一緒にヘルメットが渡される。私が後ろに乗ったのを確認すると、バイクは発進した。
ティアラは、隼人くんと私の身体の間に挟まるように持った。
「間に合う?」
「多分」
「無理はしないで」
「法定速度は守る」
そう言いながら、バイクはどんどん進んで行き、川を渡って江東区へと入る。
すると徐々に道が渋滞しはじめた。
その車の列を、隼人くんは慎重に追い越していく。
隼人くん以外の人が運転するバイクに乗ったことがないから比較できないけれど、多分、運転が上手なんだと思う。
びゅんびゅんと飛ばすというより、丁寧な運転だ。
景色はどんどん流れるけれど、時間がとても長く感じられる。
隼人くんの背中にしがみついているから、今が何時か分からない。
やがて再び川が見えてきた。
この景色は見覚えがある。通勤のときにいつも見ている。ということは、間もなく式場につくはず。
「香帆さん、式場はU市駅のどのあたり?」
「えーと、北にある大通りを進んで、二つ目の角を……」
何度も見た地図を頭に思い描き伝えると、隼人くんは「分かった」と答えてくれた。
駅が右手に見え、その前の交差点を左折する。
手に汗が滲む。間に合うだろうか。
「あれかな?」
隼人くんの言葉に首を伸ばし前方を見ると、白いチャペルの屋根が見えた。
「うん、あの教会!」
バイクは門の前で横付けされる。
五時から開始ということは、ナイトウェディングなのだろう。
スマホで時計を確認すると、五時十分前だった。
「行ってくる!」
ヘリメットを渡し、控室のある建物へ向かって走る。新婦の控室の場所は事前に聞いていて、そこへ行くとヘアメイク担当と思しき女性が立っていた。
全身黒でまとめられた彼女が「百瀬さんですか?」と声をかけてくれる。
「はい。このたびはこちらの不手際でご迷惑をおかけし、申し訳ございません」
頭を下げながら紙袋を手渡すと「お預かりします」と言って女性は駆け足で部屋へ入っていった。
入れ違うように、別のスタッフらしき人が出て来た。
「長渕様に直接お詫びを申し上げることはできますでしょうか?」
「今、準備中です。長渕様から『届いたのであれば問題ありません』と伝言を賜っております」
「分かりました。お忙しいようですし、本日はこれで帰り、後日謝罪に訪れたい旨お伝えいただけますでしょうか」
「承知いたしました。あっ、用意が整ったようですね」
控室の扉が開き、長渕さんが姿を現す。
マーメイドラインのウェディングドレスは、細身の長渕さんにとてもよく似合っていた。
申し訳なさで深く腰を折り、顔を上げる。長渕さんは大丈夫だというように小さく笑っていた。
本当にギリギリだったようで、長渕さんはそのままチャペルへと続く廊下を進んでいく。
車でたった四十分の距離が、果てしなく遠い。
呆然とメッセージの画面を眺める。
上から順に、井上さん、木村さんと続く。その次は、隼人くんだ。
隼人くん、日本橋まで電車で来たのかな。
脳裏によぎったのは、以前に乗せてもらったバイクだ。
そもそも隼人くんがまだ日本橋にいるか分からないけれど、そんなことを考える間もなく私の指は勝手に動いていた。
すぐに返信がきて、出口の番号が表示される。続けて『そこで待っていて』とあった。
地上への階段を駆け上がると、すぐ近くに隼人くんとバイクが見えた。
「隼人くん!」
「乗って」
言葉と一緒にヘルメットが渡される。私が後ろに乗ったのを確認すると、バイクは発進した。
ティアラは、隼人くんと私の身体の間に挟まるように持った。
「間に合う?」
「多分」
「無理はしないで」
「法定速度は守る」
そう言いながら、バイクはどんどん進んで行き、川を渡って江東区へと入る。
すると徐々に道が渋滞しはじめた。
その車の列を、隼人くんは慎重に追い越していく。
隼人くん以外の人が運転するバイクに乗ったことがないから比較できないけれど、多分、運転が上手なんだと思う。
びゅんびゅんと飛ばすというより、丁寧な運転だ。
景色はどんどん流れるけれど、時間がとても長く感じられる。
隼人くんの背中にしがみついているから、今が何時か分からない。
やがて再び川が見えてきた。
この景色は見覚えがある。通勤のときにいつも見ている。ということは、間もなく式場につくはず。
「香帆さん、式場はU市駅のどのあたり?」
「えーと、北にある大通りを進んで、二つ目の角を……」
何度も見た地図を頭に思い描き伝えると、隼人くんは「分かった」と答えてくれた。
駅が右手に見え、その前の交差点を左折する。
手に汗が滲む。間に合うだろうか。
「あれかな?」
隼人くんの言葉に首を伸ばし前方を見ると、白いチャペルの屋根が見えた。
「うん、あの教会!」
バイクは門の前で横付けされる。
五時から開始ということは、ナイトウェディングなのだろう。
スマホで時計を確認すると、五時十分前だった。
「行ってくる!」
ヘリメットを渡し、控室のある建物へ向かって走る。新婦の控室の場所は事前に聞いていて、そこへ行くとヘアメイク担当と思しき女性が立っていた。
全身黒でまとめられた彼女が「百瀬さんですか?」と声をかけてくれる。
「はい。このたびはこちらの不手際でご迷惑をおかけし、申し訳ございません」
頭を下げながら紙袋を手渡すと「お預かりします」と言って女性は駆け足で部屋へ入っていった。
入れ違うように、別のスタッフらしき人が出て来た。
「長渕様に直接お詫びを申し上げることはできますでしょうか?」
「今、準備中です。長渕様から『届いたのであれば問題ありません』と伝言を賜っております」
「分かりました。お忙しいようですし、本日はこれで帰り、後日謝罪に訪れたい旨お伝えいただけますでしょうか」
「承知いたしました。あっ、用意が整ったようですね」
控室の扉が開き、長渕さんが姿を現す。
マーメイドラインのウェディングドレスは、細身の長渕さんにとてもよく似合っていた。
申し訳なさで深く腰を折り、顔を上げる。長渕さんは大丈夫だというように小さく笑っていた。
本当にギリギリだったようで、長渕さんはそのままチャペルへと続く廊下を進んでいく。