真夜中にハーブティーを、あなたとふたりで
「のりしろがなければ、紙はうまくくっつかない。お互いがちょっとずつ優しさを出して、それが重なって繋がっていく。そういう連鎖に、TUKUYOMIが関われたらいいなと思う……って、俺なに語っているんだろう。徹夜のテンションやばいな」
 照れ隠しのように、隼人くんはカップのハーブティーを飲み干した。
 それからまだ赤い顔を隠すように、私から視線を逸らす。
 あぁ、好きだな。
 自然とそんな気持ちが湧いてきた。
 この人は、自分の傍にいる人を決して蔑ろにしない。尊重してくれる。
 だからこんなに、隼人くんの隣は心地いいんだ。
「好き、だよ」
 こみ上げる思いをそのまま言葉にすると、隼人くんが驚いた顔で私に視線を合わせる。
「えっ⁉」
「そういう隼人くん、好きだよ」
「それは、人類愛みたいな話ではなく」
「ふふ、違う。ひとりの男性として好き」
 照れくさい。口がふにふにと緩んでしまう。
 きっといま、私は真っ赤だろう。
 無言の時間が流れる。
堪らず、「なにか言ってよ」と口にすれば、突然長い腕が伸びてきて、隼人くんが私を抱き寄せた。
「嬉しい」
「うん」
「やっと抱きしめられる。ずっとこうしたかったんだ」
 首筋に、熱い息が触れる。
 背中に腕を回すと、さらに強く抱きしめられた。
「好きだ」
「ありがとう、私も好きだよ」
 腕の力が緩み、顔が近づいてくる。
 目を閉じると、唇が触れた。
 首筋に感じた息よりも、もっと熱い。隼人くんは何度も私の唇を啄むと、さらに口づけを深くする。
「う……ん」
 その熱に促されるように、声が漏れる。
 と、急に身体が宙に浮いた。
 えっ、と思った次の瞬間には、ふわりとベッドに降ろされる。
「……えーと、朝、だよ?」
「寝ていないから、昨晩から夜が続いているともいえる」
「えっ、それは無理があるよ。だってこんなに外は明るい……」
 私が窓の外を指差すと、カーテンがサッと閉められた。
 お店と同じ遮光カーテンは、部屋を夜へと戻す。
「これなら問題ないと思う」
 そう言うと、隼人くんは再び私にキスをした。
 額に、頬に、耳に、首に。小さなリップ音がいくつも聞こえ、そのたびに鼓動が速くなっていく。
「もちろん、無理強いするつもりはないけれど、俺はもっと香帆を味わいたい」
 呼び方が、香帆に変わる。
 いつもの年下の顔が、すっかり欲をはらんだ男のものになっていた。
 柔らかな髪に触れると、隼人くんはこれ以上ないほど甘く微笑む。
 私たちは数秒見つめ合ったあと、どちらからともなく瞳を閉じた。
 ハーブの香りがまだ濃く残るその部屋に、私たちの息づかいだけが響いた。

< 62 / 64 >

この作品をシェア

pagetop