心の彩はかわらねど
時は流れて6月になり、桜の木はすっかり深い緑になりました。上旬の日曜日に『蛍祭り』が開かれ、輝媛はそこで『蛍』のお話をみんなに聞かせました。
お話を聞いた克地は、隣に座る彩葉に向けて、口を開きました。
「源氏蛍と平家蛍か。蛍って、人の魂の生まれ変わりだって話がいくつもあるんだよ」
それを聞いて、彩葉は言いました。
「克地さんも詳しいんですね」
「輝媛先生の助手を何年もやってるんだもん。たくさん聞かされたよ。人を想う話っていいよね。心があったかくなるから」
克地の心のこもった話し方に、彩葉も心が癒やされ、穏やかに笑いました。
「ですね」
彩葉の隣に座り、二人のやりとりを聞いていたタケは、ほほ笑ましそうに笑いました。
「ふふ。克地と彩葉ぁ、ほかの人より、感じる心が強いんじゃなぁ」
彩葉と克地は照れくさそうにしました。
催しが終わると、人々は近くの小川に集まりました。
輝媛は、集まってきたファンの人たちと一緒に行きました。
「輝媛先生人気だね」
人に囲まれている輝媛を見て、克地は言いました。
「手紙だって、よーけ送られてきたんじゃ。定期的に送っとったんは彩葉くらいじゃったけどな」
タケの話に、彩葉の心はダメージを受けました。
(うぅ……黒歴史が)
小川に着いてしばらくすると、ポツポツと、小さな光が輝きはじめます。
「わあ、来た〜。きれいだね〜」
「……ですね」
素直に感嘆をあげる克地に対し、彩葉はぎこちなく共感をしました。
すると、タケの手の平の器に、一匹の蛍がやってきました。
「おや、かわええなぁ」
タケは蛍をいつくしむようにほほ笑みました。
「これを死者の魂だなんて、美しすぎますよね」
克地もタケも、蛍の光にしみじみとしていましたが、彩葉はあまりキレイだとは思いませんでした。