無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
「……何をしたんだ?」

「え?」

「痛みが消えた。こんなこと初めてだ。いま俺の身体にその手でなにかしたのか?」

すぐに真白は俺から慌てて手を離すと、畳に頭を付ける。

「あの……私の体質は亡き母しか知らないのですが、その母から私は毒を和らげることができるかもしれないと聞いたことがあったので、苦しむ千隼様をみて、ついお身体に触れてしまいました。出過ぎた真似をして申し訳ございません」

真白は小さな体をカタカタを震わせている。

「すまない。責めたつもりはなかったんだ。顔を上げてくれ」

「いえ……ご無礼をどうか……」

「真白お願いだ、顔を上げてくれ」

真白はおずおずと顔を上げると、泣きそうな顔で俺を見つめている。

(にわかには信じられない)

(毒が効かない体質……毒を和らげる? それで鬼紋の痛みが和らいだのか? 本当にそんなことが……)

ただ真白に触れられた部分は熱が引き痛みもない。
俺は無意識に真白の頬に手を伸ばした。
頬に触れれば、真白の身体が僅かに跳ねる。

「ありがとう」

「……え?」

「俺のことを気味悪がることなく、気遣ってくれて感謝する」

「……とんでも、とんでもございません」

「真白?」

雪の粒のように、はらはらと涙をこぼす彼女に心が騒がしくなる。
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