無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される

第1章 無能の花嫁

今日も私こと神堂真白(しんどうましろ)は屋敷の離れの自室で縫物をしている。

主に縫うのは結婚してから一度しか会ったことのない旦那様の着物とシャツだ。

「……いつ着て頂けるかもわからないけど」

でも“無能モノ”である私にとってできることは縫物や炊事、屋敷内を掃除することくらいだ。

「痛……っ」

また考えても仕方ないことを考えていたからかもしれない。わずかな痛みに目をやれば人差し指の腹から真っ赤な血が滲んでいた。
そっと口に含み止血をしながら顔を上に向ける。

空は雲一つなく晴れ渡っており、目の前には枯山水が広がっていて桜が美しく咲き乱れている。
しかし、こんなに美しい景色を観ても心は微塵も動かない。

(……間もなく半年ね)

私が旦那様である神堂千隼(ちはや)と過ごしたのはたった一日だけ。
言葉を交わしたのも一度だけ。


彼は我が倭帝國(やまとていこく)において誰もが知る最強の鬼狩り師であり、帝都の最高軍事機関『極楽隊(ごくらくたい)』の若き隊長だ。

代々神堂家に伝わる炎の力を宿す宝刀を操り、彼が赤い瞳を持つことから人々は“烈火の神”と呼ぶ。

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