無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
私たちが結婚したのは半年前のこと。
婚姻の儀の翌日に帝都に鬼の襲撃があり、彼は皇帝からの命を受け鬼の討伐に向かった。

「……千隼様はご無事かしら……」

ぽつりと呟いた言葉はすぐに春風に攫われていき、静かな空間に身を任せれば、あの日の夜を嫌でも思い出してしまう。

──『この結婚に愛はない。よって互いに必要とすることもない』

初夜の夜、妻となって彼に初めてかけられた言葉はそれだった。

彼が寝所に入ってきたときは緊張から身を縮こませていた私だったが、彼から突きつけられた言葉にすぐに心臓がひやりとした。
どこにいっても誰にも必要とされない。
夫に身体すら必要とされない自分がみじめで仕方なかった。

ここでも私は誰にも、なにひとつ必要とされない“無能モノ”、そう思った。



私の生家である一之宮(いちのみや)家はこの國で由緒ある家門であり、古来より“浄化”の力を操ることができる。
“浄化”の力を操れる家門は決まっており、その中でもトップに君臨するのが一之宮家だった。 

鬼狩り討伐の際に鬼狩り師が受けた瘴気(しょうき)を癒すことができるのは“浄化師(じょうかし)”のみ。
また鬼討伐の際、鬼の残骸によって汚れた土地を浄化することができるのも“浄化師”であることから、古より特別な存在として扱われ、家門は繁栄の一途をたどってきた。

そんな一之宮家に翳を落とした存在が“無能モノ”と呼ばれる私だ。
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