無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
「皆、俺の選んだ花嫁を祝福している。この街の者は皆、お前の味方だ。安心していい」

そして再び手を引くと、ある店の前で足を止めた。すぐに恰幅のいい店主が出迎えてくれる。

「これはこれは千隼様、そちらのお綺麗なお方は奥方様でしょうか?」

「ああ。妻の真白だ。今日は簪を送りたくて連れてきたんだ」

「え……っ」

思わず発した声に千隼様が唇を引き上げる。

「言っただろう、朝餉の礼がしたい。あと長く留守にした詫びもこめて」

目の前には金細工が施され高価な宝石がついた簪が所狭しと並べられている。

「いけません。このような高価なもの……私には贅沢でございます」

「何度言わせるんだ? 大事な妻に贈り物がしたい俺の気持ちを無下にしないでくれ」

「ふふ、仲睦まじいことですね」

「新婚なんでね」

簪屋の店主に恥ずかしがることなくそう口にする千隼様を横目に顔がただひらすら熱い。

「あの……千隼様」

「なんだ? いらないは無しだぞ」

「はい……千隼様に選んでいただいても構わないでしょうか?」

「俺が?」

「はい、千隼様が選んでくださった簪をつけたいのです」

夫に選んでほしいなどと、無礼かもしれないと思ったが、千隼様は僅かに両目を見開いてから、ふっと笑って頷いた。
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