無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
その言葉の意味を考えれば途端に身体が震えてくる。千隼様から余命僅かだとは聞いていたが、そんなに差し迫った状況だとは考えていなかった。いや、考えたくなかったのだ。

「意味はわかるか?」

「それは千隼様が……浄化師を必要とされないほどに……お命の期限が……差し迫っているということでしょうか?」

「そうだ。でもそれはお前のせいでじゃない。言っただろう、生まれながらに背負った運命なんだ」

「……嫌です……っ」

まるで駄々をこねている子供のようだ。それでも涙を隠すことも泣くことも我慢できなかった。

「真白……」

千隼様がそっと気遣うように私の抱き寄せる。

「何も……できない自分が恨めしいです……」

「そんなことはない。そばにいて笑ってくれるだけで心が安らぐんだ。俺にはお前が必要なんだ」

「千隼様……」

「だから泣くな」

もどかしくてたまらない。どうして私には浄化の力がないのだろう。“無能モノ”、そう思っていつも俯いて打ちひしがれてきた。

これが私の運命だとどこか諦め流されてきた。そんな私を唯一、必要としてそばにおいてくれる千隼様にできることは本当にないのだろうか。このまま夫の命が尽きるのを待つなんて──。

(諦めたくない……っ)

濡れた頬を袖で拭うと、私は千隼様の赤い瞳を正面から捉えた。
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