無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
私が“無能モノ”と知った上で千隼様との縁談が決まったと聞いたとき、ほんの少し期待した。

力がなくとも子供に恵まれ、その子に力が宿れば、こんな私でもこの世に生まれてきた意味になる、そう思った。

けれどそんな小さな期待は初夜の夜に打ち砕かれてしまった。
千隼様は私に触れることもなく、冷たい言葉を残して部屋を出て行ってしまったから。

「……占者に決められた政略結婚だったのに、何を期待していたのかしら…。“無能モノ”の私じゃ千隼様から見向きもされなくて当然よ」

神堂家に嫁いでから下女たちが話しているのを聞いて知ったのだが、私たちの結婚はただの政略結婚ではなく、占者によって決められたものだったのだ。

神堂家の前当主であり今は亡き神堂利親(としちか)は有能な鬼狩り師だったが、一年前に病に倒れた。

余命幾ばくないことを悟った利親は次期当主の千隼様の後ろ盾となりまた家門のさらなる繁栄のため、國で有数の占者に息子の結婚相手を占わせたのだ。

偶然にもそれが私だった。
そう“無能モノ”の私に本来縁談など来るはずもなく、神堂家からしてもまさか“無能モノ”の嫁を娶ることになるなど予想外だっただろう。

どこにいても私は一生“無能モノ”。

誰にも必要とされることもなく、まして愛されることもない。ただ命が終わるのをこの離れで終えるのを待つだけだ。

「……寂しい、人生ね」

もう泣かないと何度心に誓っても、弱い私はすぐに涙が溢れそうになる。

ぐっと喉に押し込めば、渡り廊下の方から足音が聞こえてくる。

(あの足音は……)

私はすぐに襖の方に向かって正座をした。
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