無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
──バンッ!

乱暴に襖が開けられると赤地に牡丹模様の着物を纏った女性が入ってくる。

「ごきげんよう、“無能モノ”の真白さん」

栗色のウェーブかかった髪に鼻筋は通り、長いまつげと大きな目元が印象的で誰もが振り返る美人。

彼女の名前は光小路彩芽(ひかりこうじあやめ)。古来より一之宮家に匹敵する浄化の力を操る、浄化師の名門、光小路家の長女で千隼様の幼馴染だ。

彼女の浄化の能力は帝國随一と言われており、人々からは“癒しの光姫(ひかりひめ)”と呼ばれ尊ばれている。

「彩芽様、おはようございます」

「はぁ、相変わらず瘴気並みに陰気臭い空気が漂う部屋ね」

彼女はそのまま私の椅子に断りもなく座ると、いつものように人差し指で催促する。

「お茶淹れて。この離れ遠くって喉乾いたわ」

「はい、少々お待ちください」

私はすぐに立ち上がり急須にお湯を注ぎ入れる。彩芽様は髪を指先でくるくると弄りながら、欠伸をする。

「ふぁあ。疲れた。すぐそこでまた鬼が出たのよ」

「そう、なんですね……」

下女からも冷遇されている私に外の情報は全く入ってこない。

「あとで肩も揉んで頂戴、それから足湯もしたいわ」

「承知致しました」

鬼が出れば鬼狩りが狩り、狩れば必ず瘴気が発生する。“浄化師”である彩芽様はその都度、鬼狩りを終えた鬼狩り師たちが浴びた瘴気を浄化し、また鬼の血で汚れた地面を浄化している。

「誰かさんが無能モノのせいでこのあたしが朝から晩まで浄化しなきゃならないなんて、ほんと最悪~」

「申し訳ございません……」
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