無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
「浄化師だったことが仇になり、死ぬのにまだ時間がかかりそうだな」

彩芽様は地面に這いつくばりながらも、まだ私を睨みつけている。そんな彩芽様の変わり果てた姿を千隼様が複雑そうな表情を向けている。

「ゆるさない……グルッ……千隼様を、奪った無能……モノっ」

「真白後ろを向いていろ……首を落とす」

「千隼様お待ちください」

私は彩芽様の傍で膝をつくと、両手で彼女の身体に触れる。

「真白っ、何をして……」

「そいつから手を離すきゅ!」

「大丈夫です。もう彩芽様に動く力はのこっておりません。だからせめて、私に天授の力があるなら楽に逝けるよう癒して差し上げたいのです」

「なぜ彩芽を助けるようなことを? お前にひどい言葉ばかり浴びせた上、邪香を使って鬼に殺させようとしたんだぞ」

「わかっています……でも……千隼様をお慕いするお気持ちは本物だったと思うのです……」

「……」

誰からも必要とされず生きてきた私と、生まれながらに多くの人に必要とされながらも、愛している人からは必要とされなかった彩芽様。

似ているようで、本質は違う。

もしかしたら誰からも必要とされないことよりも、たった一人愛する人から必要とされないことの方が、ずっと辛く苦しいのかもしれない。

彩芽様を見ているとそんな考えが浮かんだ。

私は両手に祈りを込める。もう誰かを憎んだりしないように。もう悲しく打ちひしがれ絶望を感じないように。願わくば来世は幸せな未来がまっているようにと。

消えゆく彩芽様のお顔はとても安らかで、最後に微かに動いた唇は“ありがとう”、そう言った気がした。

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