無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
「ナユタマルの話と今までのことを照らし合わせれば全て納得がいく。真白のその天授の力をもつ手から作り出された物や触れたものには、浄化や癒しの力が宿るのだろう。だから俺の鬼紋の一部も消えたんだ」

「でも、どんなに手を当てて祈りを捧げても千隼様の残りの鬼紋が消えないのはなぜなのでしょうか……?」

マルから桜天女の生まれ変わりだと聞いた私はすぐに千隼様の体に手を当てて祈りを捧げて見たが、残りの鬼紋は消えなかったのだ。

「あの時、マルは千隼様になんと言ったのですか?」

マルは鬼紋が消えないと嘆く私を横目に何やら千隼様に耳打ちしていたのを見たのだ。
千隼様は不自然にこほんと咳払いをする。

「それは……そのなんだ。夫婦仲良く暮らしていればそのうち消えるだろうと言っていた」

「えっと……夫婦仲良くと言われましても……具体的な策はわからないのでしょうか?」

「ああ、それは……そのなんだ」

「? やはり千隼様は何かご存知なのですか?」

「いや……知らない」

そう言ってなぜだか頬を僅かに染めた千隼様を見ながら私は首を傾げる。

「今度マルが来たら聞いてみます」

マルは人間界に留まるには神獣界に届出が必要だとかなんとか言って、また姿を消してしまったのだ。

「その必要はない」

「え……?」

ふいに千隼様の手が伸びてくると私をふわりと抱えて膝に乗せる。

「あ、あの……」
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