甘すぎる溺愛は、美しい花の隣で。
澪花さんが俺を好きになってくれれば、父も結婚を認めてくれる。

そう思っていたのに……


『会長が本格的に動かないなら、澪花さん以外を婚約者に迎えると仰っています』


それでも急かしたくなくて、澪花さんの気持ちを尊重したくて、まずは俺の気持ちをちゃんと伝えて……そんな願いすら叶わず、事態は勝手に進んでいく。





「お前の婚約者に迎えたいと言っていた女性の花屋、そろそろ買収にかかるかもな」





父から教えられたのは、澪花さんの店がある地域の企業が進めている新規事業の話だった。

澪花さんはあの店を一番大切にしている。

断ると分かっていた。

「あの会社は強引だから、店の取引先に手を回して潰させるくらいはするぞ。……が、宮坂グループが彼女を婚約者として迎えれば、宮坂グループを敵に回したくなくて流石にあの会社も手を引くだろう」

きっと父からの最後のチャンスだった。

何より澪花さんの店がなくなるなんて考えられなかった。

一緒に働いているから知っている。

澪花さんは常連さんを大切にして、新しいお客様ともしっかり向き合っていること。

そして、大きな利益はあげられてはいないこと。

それでも、細々と大切に店を続けていること。

店の取引先に手を回されれば、澪花さんの店が潰れることは容易(たやす)く想像出来た。

そして、重なったように明らかになる辰郎さんの会社の経営不振。
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