甘すぎる溺愛は、美しい花の隣で。
そこはバラは少ないけれど、落ち着いた雰囲気の場所だった。

暖かい風はもう初夏の訪れを告げていて、もうすぐ本格的な夏が始まるのだと実感する。

空雅くんが私と向き合って、目を合わせる。



「澪花さん。俺、澪花さんに契約結婚を申し入れた時、嫌われても良いって本気でも思っていました。でも、澪花さんはそんな俺に『嫌わない』と言った。『もう俺が優しい人だと知っているから』と言ってくれた。その時、思ったんです。折角結婚するなら両思いが良いなって」



空雅くんは真剣な表情だったけれど、どこかもう幸せそうで。






「澪花さん、愛しています。ずっと前から。ずっとずっと前から澪花さん一筋」





「え……」





空雅くんが愛しい思い出を振り返るように、優しい表情をした。




「澪花さんが店を始めたての時、澪花さんは宮坂グループが主催するパーティーで会場に飾る花を運んでいました。その時に、パーティー参加者とぶつかって、澪花さんの髪にワインがかかったんです。にも関わらず、澪花さんは気にもせず『花にかからなくて良かった』と呟いた。それが印象的で、俺はつい声をかけてしまったんです」

「きっと澪花さんは覚えていないくらい小さな出来事。でも、あの日、澪花さんが楽しそうに花のことを教えてくれて。それで笑ってこう言うんです。『花って人生の出来事を彩ってくれるの』って。純粋に格好いいと思った。きっと一目惚れでした」




空雅くんが私に一歩近づいた。





「でも、一緒に働いて、澪花さんをもっと好きになった。澪花さんはいつだって真面目で、思いやりがあって、家族のために契約結婚出来る人。でも、何度考えたってやっぱり澪花さんと両思いになりたい」

「澪花さんは前に言いました。『今が幸せだから王子様は要らない』と。でも、もっと幸せにするからどうか俺を求めて下さい」





空雅くんは私から目を逸らさなかった。
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