悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
ここかなと覗いた患者待合室の中、私を見た母が待合いのソファから腰を上げる。
となりには父親もいて、「仕事は?」と、目を大きくした。
「編集長が、家族がそんな大変なときなんだからすぐ向かえって、帰らせてくれたよ」
「そう、いい上司ね」
「うん。で、お兄ちゃんは?」
「大丈夫よ、オペ後も経過は順調みたい。たぶん、もう少ししたら執刀してくれた先生から詳しい説明をしてもらえると思うんだけど」
執刀医……兄の症状的に、診療科目は心臓血管外科ではないだろうか。
「え、手術したのって、心臓血管外──」
「波多野さん」
私の声にかぶるようにして、待合室の入り口から声をかけられる。
振り返ると看護師と思わしき女性がひとり立っていた。
「お待たせしました。主治医からの説明をさせていただきますので、こちらへどうぞ」
ちょうどいいタイミングで、これから兄の治療の説明をしてもらえるらしい。
看護師の先導のもと両親の後について、面談室へと入室する。
ひとりでに鼓動が高鳴っていくのを感じながら、部屋の中で待つ人物の姿に自然と息を止めた。