悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
「波多野さん、回診の時間です」
ガラガラと器具などを積んだカートを押した看護師が入室してきて、邪魔にならないように椅子から立ち上がる。
その後に続いて水瀬先生が姿を現し、思わず目を見張った。
「波多野さん、調子はいかがです?」
マスクの上に見える切れ長の目は、今日もなんの感情も滲ませていない。見る人によっては怖くも感じる冷たさだ。
この間は椅子にかけている状態で対面したからわからなかったけど、かなり上背がある。一緒に来た看護師の女性より頭一個以上は大きい。
「おかげさまで、悪くないです」
「そうですか。モニタリングでの状態を見ても安定していますし、順調な経過かと思います。痛みも出てないですか?」
「はい、今のところ」
水瀬先生は兄に繋がるモニターと点滴のチェックをし、控えている看護師に指示を出す。
「痛み止めは切れないように引き続き点滴で送りますので、我慢せずになにかあれば知らせてください。では、お大事に」
看護師に「よろしく」と言い残し、水瀬先生はひとり病室を出ていく。
ちょうど私のいる場所が処置の邪魔になるようで、看護師に「失礼しますね」と場所を譲るようお願いされる。
「あ、すみません。お願いします」
終わるまで外で待っていたほうがいいかと思い病室を出ていくと、部屋の前で先に退室した水瀬先生が電子カルテと思われるタブレット端末を操作していた。
もしかして、今って絶好の取材チャンスじゃない……?