悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
「あ、そのことなのですが、実は身内が水瀬世田谷総合病院につい最近入院しまして。奇遇と言ってはなんですが、心臓血管外科に」
そう告げると、佐渡外科部長は「波多野さん……」と考えるように呟く。
「ああ、少し前に緊急オペで入ってきた、あの波多野さんの」
「はい、兄なんです」
「そうでしたか、それはそれは。しかも、水瀬が担当医でしたね。こんな話をしておきながらですし、担当を変えましょうか?」
「あ、いえ。患者家族として、いろいろ調べやすいかなと思っていますし、現状大丈夫です」
見舞いに行ったときの様子や兄からの話を聞く限り、オペも無事に済んでいるし命に関わる医療ミスは起こらないだろうと踏んでいる。
逆にこんなタイミングで担当医を変えてもらって、変に勘繰られて情報収集の妨げになったら勿体ない。
「私も目を光らせていますから、お兄様のことはご安心ください」
「はい、ありがとうございます。あの、ひとつお伺いしたいのですが……」
話してみて、佐渡外科部長が水瀬拓海を追放したいのはよくわかった。
そこに、個人的感情があるのかが知りたい。
「佐渡さんは、ただ医師として、真実を明るみにして水瀬医師を追い詰めたいのですか? それとも、なにか個人的な部分があってとか……?」
「私はただ、彼のような医師は業界の癌になりかねないと思っているだけだ。それ以上でも以下でもないですよ」
いつの間にかもうほとんど飲んでしまっているカップを手に取り、呷るように口元で傾けたその姿にどことなく違和感を覚えた。