悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
「このまま注目されたら、水瀬先生も外聞が悪いのではないですか?」
若干、挑発をするような言い方で攻めた私を、彼はまったく動じずフンと鼻で笑う。
「跡取りである俺に物申せる奴がいるとでも? はっきり言って、お前を二度とこの病院に来られなくすることなんて簡単だ。なんなら、医療界にも関われない記者にすることだって」
思った以上に手強い。それに、この人なら言っているようなことを容赦なくするに違いない。
「わかりました、お時間はいただきません。今、この場でお話しください。本当のことを、どうしても知りたいんです」
それでも尚、引き下がらない私を、水瀬先生は凝視する。睨み合うような形で、互いの間に数秒の沈黙が落ちた。
「……時間切れだ。この場で話をするわけがないだろう。俺は今急いでるんだ」
そう言ってスクラブのパンツのポケットから紙切れを取り出し、一緒に手にしたペンでなにかをメモしていく。
「場所が決まったら、留守電にメッセージを」
「え、あ……はい、わかりました」
応じてもらえると思っていなかったから、急展開におかしな反応を見せてしまった。
水瀬先生は進行方向へと向かって颯爽と立ち去っていく。
よかった……案外、食い下がってみるもんだな。
ひとまず一歩前進した状況に胸を撫でおろし、早速店の手配をしようとスマートフォンを取り出した。