悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました


 スタッフがふたりで個室にやってきて、冷たそうに結露したボトルに入ったドリンクをそれぞれのグラスに注いでいく。

 もうひとりのスタッフは前菜のサラダを置いていった。


「今日は、無理を言って時間を作っていただき、ありがとうございました」


 ふたりきりになったところで取材承諾のお礼を口にする。「記録を取らせていただきますね」と、ボイスレコーダーの使用の許可を取る。


「取材に応じるとはひと言も言っていないが」


 しかし、ここに足を運んだからといって話す気はないと彼はアピールする。

 まぁ、そう簡単に取り合ってくれるとは思ってはなかったけど……。


「院内で患者の家族と長話していると、変な噂でも立てられたら困るからな」

「それは、すみませんでした。私も場所をわきまえず、声のボリュームを抑えられなかったですし」


 どう切り込んでいこうか。まったく隙のない様子に水で喉を潤す。そんな私とは対照的に、水瀬先生は「いただきます」とナイフとフォークを手に取った。


「早速ですが、四年前、医療ミスがあったことについて。その執刀をしたのは事実なのか。その後、海外に雲隠れしたというのは?」


 変に回りくどい訊き方をする必要もないと感じ、単刀直入に本題に入る。

 上品にサラダを口に運ぶ水瀬先生には、一切の動揺も見られない。

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