悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
「どこの情報筋か知らないが、俺は執刀して医療ミスを起こし、海外に逃亡したことになっているのか」
ふっと笑い「面白いな」と言う。その表情は〝くだらない〟とでも思っていそうだ。
「正直、私のほうでまだ調べ足りない部分があるのは確かです。ちゃんと証言を取り切れていないまま、水瀬先生と直接お話する機会が巡ってきてしまったため」
佐渡外科部長からは、まだ頼んだ被害者の方の件は連絡が来ていない。実際に被害に遭った遺族の話が聞けていれば、今この場の状況は違ったと思う。
「この場に及んで言い訳か。ジャーナリスト失格だな」
そう言われてしまうと言い返すこともできない。でも、だからといってこの程度で負かされるわけにはいかない。
「いえ、証言が揃えばその点についても追求させていただきます。今日は、水瀬先生自身から当時の話を伺いたいと思っています。当時、あなたの判断ミスにより、被害者の方は命を落とされた。本来なら助かるはずだったのに、上からの指示に背き、最悪の結果を招いてしまった。それに間違いはないですね?」
「何度も断っているが、俺はなにも話す気はない」
「それは、当時のことを蒸し返して明らかになれば、ご自身の名に傷がつくのが怖いからです?」
手元のプレートに目を落としていた水瀬先生は、サラダを完食しカトラリーを元に戻す。ゆっくりと私へと視線を向けた。