悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
こんな話の最中、ドアがノックされ次のコース料理が運ばれてくる。
まだ食べ終わっていないサラダのプレートの横に、「ポルチーニのクリームスープです」と温かいスープが置かれた。
一時休戦となったテーブルには、ふたりきりになっても沈黙が落ちたまま。
水瀬先生は黙ってスプーンを手に取った。
まったく動じていないその姿を盗み見ながら、タイミングを逃してしまったサラダを口に運ぶ。
いろいろ頭の中が混乱し始めていて、美味しいはずのサラダが口の中でただもさもさとした物体に感じる。
完全に口車に乗せられてまた感情的になってしまった。
手強い相手だとはわかっていたけれど、なにかしら話は引き出せると思っていた。それなのにこのありさま……。情けない。
ちょっと攻める方向を軌道修正しないと、また煽られて相手の思う壺になる。
「先生は、どうして医師になったんですか」
唐突に質問を繰り出してみると、水瀬先生は〝お前には関係ない〟と言わんばかりの鬱陶しそうな視線をちらりと寄越す。
「それが記事に関係あるのか? どうせ欲しい部分しか使わないんだから、好きなように書けばいいだろ」
「私はそんなことしません!」
取り合ってもらえない様子にまた言葉が強くなりかける。心の内で感情的になるなと自分に言い聞かせた。
「失礼ですけど、なんか……あなたみたいな横暴な人が医者だなんて、間違ってます」
つい本音がぽろりしてしまったと一瞬焦る。案の定、水瀬先生の〝なんだと?〟と言わんばかりの鋭い視線が私に向く。