悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
取材と題した食事の席は、コース料理を食べ終えお開きとなった。
結局、有力な取材には発展しなかった。
支払い後の領収書を仕舞いながら小さく息をつく。
気づくと水瀬先生の姿はなく、急いで店の入り口へ向かう。
もしかしたらもう帰ってしまったとか……?
最後に今日のお礼をひと言伝えたかったと思って出ていくと、水瀬先生は店の前に立っていた。
「すみません、今日はお時間頂戴しましてありがとうございました」
「これから会社に戻るのか」
「え? いえ、今日は直帰の予定です」
「自宅はどこだ。送っていく」
一方的にそう言った水瀬先生は、先を歩いていく。
「えっ、いえ、そんな、大丈夫です!」
私の返答を聞いていないのか、水瀬先生は店向かいのパーキングへと行き、駐車料金の支払いを始める。
その近くまで行き「水瀬先生」と改めて声をかけた。
「記者として甘えるわけにはいきませんので。本日はありがとうございました」
「強引に乗せられたとでも言えばいい」
支払いを済ませた水瀬先生が向かったのは、すぐそばの黒い外国製高級車のセダン。助手席のドアを開き、「出すから早く」と急かす。
「え、でも」
支払いも済ませたから、とりあえず車を出したいに違いない。街灯に照らされる水瀬先生はこっちを睨むようにじっと見ていて、そそくさと言われた通り車に近づいた。
「本当に、私が乗っても?」
「ここまで呼び寄せて、冗談だなんて言わないだろ」
今日話した印象からすれば、そんな風に意地悪なことを平気で言いそうとも思える。
でも、本当に私を車に乗せて送っていく気らしく、水瀬先生は助手席のドアを閉めた。
運転席に乗り込むと、「最寄り駅は」と訊く。