悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました


「高(円寺です。あの、先生がどちらにお住まいか知らないですけど──」

「高円寺なら、同じ方面だ。ついでになるから問題ない」


 私の言いたいことを先回りするようにして言い、エンジンをかける。車はすっと滑らかにパーキングから発進した。

 乗り慣れない革張りのシートと、遮音性能が高い静かな車内。落ち着かず、進行方向をじっと見つめる。


「なんか、すみません。ついでとはいえ……」


 車は駅前を抜け、人通りがまばらな夜の街を走っていく。


「店の予約をしてもらった時間が遅かったからな。こっちの都合を読んで遅めにしてもらったのだろうとは察している」


 驚いた。そんなことを気にしてもらっているなんて思いもしなかった。

 彼にとって面倒な記者の私なんかとは、さっさと解散して帰りたかっただろうから。


「さっきも言ったが、あんな調子で正義感振りかざしていたら、人の恨みも買うだろう。俺みたいないい人ばかりじゃないんだ、夜道で狙われたりしないのか」


 いい人って……よく自分で言えるな。いや、敢えてわざと自虐ネタみたいな?


「おかげ様で、今のところはなにもないです。誤解されているようですが、私、恨みを買うような仕事はしていないと自負していますので」


 水瀬先生はふっと笑い、「ずいぶんと自信があるんだな」なんて言う。

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