悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました


「ちゃんとした記事は書こうと心がけてはいますけど、もともと雑誌記者になるのを志望して出版社に就職したわけではないので、そんな人に恨まれるようなガチガチの取材なんてたぶんできないです」

「へぇ、雑誌記者は不本意だったのか」

「私、本当は児童書の編集をしたかったので」


 なぜだか普段の調子で話してしまい、ハッとする。相手は取材対象だっていうのに。

 私の話を聞いた水瀬先生はなぜだか急にははっと笑う。

 今日の取材中、不敵な笑みは数度見かけたものの、今みたいに普通に笑う瞬間は目撃しなかった。思わずつられたように運転席に目を向けてしまう。


「ずいぶんとかけ離れた部署にされたもんだな」

「仕方ないじゃないですか! 希望が通らなかったんですから……」

「異動はできないものなのか」

「一応、上司は私の希望を知ってます。ちょうど、今回の仕事がうまくいったら、異動の口を利いてもらえると言われていて──あっ」


 ついぺらぺらと内情を話してしまい、慌てて口を噤んだものの時すでに遅し。


「確かに、記者になるには素直すぎる」


 そう言って笑った水瀬先生の声を最後に、車内には沈黙が落ちる。

 話の流れとはいえ、つい余計なことを話してしまったと反省した。

 しばらくして、再び話を切り出したのは水瀬先生のほうだった。

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