悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました


「その大事な異動がかかっているなら、俺の〝医療ミス〟の記事をなんとしてでも出さないとダメってことだな」

「えっ!?」


 急にその話題に戻され、素っ頓狂な反応が飛び出す。

 そんな私を横目に見て、水瀬先生はふっと苦笑を漏らした。

 今回の取材、記事作成に大きな進展はなかったけれど、私が進めようとしていることは本当に正しいのかという疑問が生じてくる。

 この人は白だという証拠が出たわけではない。

 でも、これから書こうとしている医療ミスや隠蔽するための雲隠れという事実をどこか信じられないのだ。


『否定もなにも、命に優先順位なんてないということだけだ』


 水瀬先生が言ったあの言葉が引っかかっている。耳の奥で主張するように残っていて消えない。

 医療に信念のない人間から、果たしてあんな言葉が出てくるのだろうか。

 そればかりを考えていた。

 一度会話が落ち着くと、そこから大した話もせず目的の高円寺駅が近づいた。

 駅から自宅まで遠くはないのかと訊かれ、徒歩で十分もしないと答えた。駅前ロータリーから外れた停車しやすい場所に車が停められる。

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