悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
「わざわざありがとうございました」
「ついでだ。別に構わない」
「ついででも、です」
言葉を返しながらシートベルトを外そうと手をかける。が、なぜだかうまく外れない。
「あれ……」
手元が暗い上に、高級車であまりガチャガチャするわけにもいかず手こずっていると、横から「なにやってんだ」と声が聞こえた。
「シートベルトも外せないどんくさい奴なんて天然記念物だろ」
「あ……」
運転席から体を寄せ、助手席のドア側に腕が伸ばされる。
声につられるように振り向くとすぐ目の前に水瀬先生が迫っていて、暗がりながら近距離で見た美しい端整な顔面にどきりとして思わず息を止めた。
カチャッとシートベルトが外れた音でハッと我に返る。
「す、すみません」
そそくさとドアを開け降車し、車内を振り返る。
「今日はお時間いただき、ありがとうございました。送ってももらい、お手数をおかけしました。また、病院で」
「ああ。夜道、気をつけて帰れよ」
ドアを閉め、頭を下げて走り去る車を見送った。
なんか、掴めない人だよな……。
悪い人なのか、いい人なのか、だんだんよくわからなくなっている。
でも、感覚的なものかもしれないけれど、直観では信じてみたくなっているのは事実。今日少しでも話してみて、確かに印象は変わり始めている。
いやいや、絆されちゃだめ!
自分に言い聞かせるように訴え、家路を急いだ。