悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました


 両親が総合病院を持つ家に生まれ、幼い頃から自分も父のように将来は医師になるのだろうと思っていた。

 それが幸せであると目に映っていたし、そうなりたいと自然と望んでいた。

 そのうち、兄たちの背中を追って学業に励み、医師への道を邁進していった。

 二十四歳で医師免許を取得、国立の医大を卒業後、初期研修から心臓外科を中心にし、外科後期研修も手術症例の多い施設で経験を積んだ。

 父親から、関西水瀬総合病院での勤務を勧められたのが三十歳を目前にした頃。

 背中を追いかけてきた父から経営する病院のひとつで働くのを許されたのは、医師免許を取って約六年、やっと医師として認められたような気がして嬉しかった。

 ここから更にひとつひとつ積み上げていきたい。

 その当時は期待に胸を膨らませ、熱量も最高潮のときだった。

 働き始めてすぐの頃、六十代の男性患者を担当医として診ることになった。

 自分にとっては初めて正式な担当患者で、医師としての使命感に燃えていたのは確かだった。

 患者本人はもちろん、患者家族ともできる限り近い距離間で寄り添い、親身になって治療を進めていた、そんな矢先、患者の容態が悪化、計画していたオペを緊急で行う必要が出たのだ。

 急を要する事態に動揺しながらも、駆け出しなりに最前を尽くし、周囲の協力を得てオペへと入ることになった。

 しかし、それにストップをかける人間が現れた。

< 48 / 51 >

この作品をシェア

pagetop