悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました


 当時、関西水瀬総合病院の外科部長だった佐渡だ。

 彼は別の患者のオペを予定していると、こっちのオペ協力を頼んでいた人員を引き抜き、物理的にこちらのオペが行えない状況を作り出した。

 外科部長の命となれば従わなくてはならないと、申し訳なさそうにチームを抜けていった人間も何人もいた。

 その後、やむを得ず転院の手配を行っていた際、容態は急変、手を施せないまま患者は帰らぬ人となった。

 ショックだった。

 そのときはただ、医師として患者の命を救えなかったことが。自身の力不足だったと、ただその現実だけにひたすら嘆いた。

 でも、その裏で起こっていた汚い事実は、許せるはずのないものだった。

 代わりに行われたオペの患者は、地元の権力者。その関係者から、佐渡は袖の下を贈られていたのだ。

 その現場をたまたま目撃してしまい、込み上げる怒りに理性を失いかけた。

 自身の技術だけではない。

 権力や、形として見えないなにかの力に押し潰され、医師として患者を救えなかったこと。

 こんな腐ったことがまかり通っていいものかと、佐渡に直接抗議もした。

 だが、そんな奴が素直に話を認め、謝罪をするはずもなく、最終的には『私は早く転院させろと言ったはずだ』、『君の判断ミスで患者を救えなかったのだろう』と言い出したのだ。

 間違っている。
 根本から立て直さなければ、受け継がれてきた病院の歴史と品格までもが蝕まれていく。

 病院再生のため、そして自身も腕を磨きたいという思いで海外臨床へと出ていき、臨床フェローとして執刀経験を数年積んだ。

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