悪名高い天才外科医と一夜の艶事で愛を孕んだら──想定外の溺甘愛が待っていました
帰国後、専門医試験の合格をもらうと、父の意向により東京、世田谷のグループ病院での勤務が始まった。
ところが、なんの因縁か勤務する東京の病院に佐渡が出向してきたのだ。
案の定、佐渡をはじめ彼の派閥の人間には、当時の一件が尾ひれをつけて囁かれていた。
医療ミスを隠すため、親に頼み込み海外へ雲隠れした、と。
彼がどうにかして俺を潰したいのは明らかだった。
それでも、なにがあっても真っ当な医師でいようと心に誓ったあの日──。
心を通わせていたのに助けられなかった患者の存在は、俺に感情を消して医療に向き合うようにさせていった。
誰かの顔色を窺って人の命を天秤にかけるような医師になるのなら、仲間たちにも患者にも感情を消して命のためだけに真っ当な医療を貫く。
そうやってこれまでやってきたのだ。
汚いやり方で貶めようとする奴がいても、自分の信念を崩さず自身の腕を信じる。
『もしあなたに医療への信念があるのなら、否定すべきところはするべきだし、誤解を招くようなことは避けるべきだと思います。後継される病院のためにも、あなた自身のためにも』
ふと、昨日あの記者に言われた言葉が蘇る。
確かに、あの記者が言っていたことは一理ある。
黙秘し続けるよりも、正すべきところはしっかり正す。感情を消して現場に立つようになってから、スタッフも患者も心を見せてぶつかってくる人間はいなくなった。
辛辣、冷淡、そう言われることで、病院への評価に一定の不評を集めている事実も間違いなく無視はできない。
それにしても、今まであんな風に意見してくる奴はいなかった。
変わった女だ。