響け!涙のペザンテ
アントーニョかオルハンが出社してきたのだとレオンハルトたちは思った。しかし違った。見知らぬスーツ姿の初老の男性が立っている。

「すみません。ご相談をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

依頼人である。レオンハルトは笑みを浮かべ、男性に近付いた。

「大丈夫ですよ。応接室でお話をお伺いします」



男性の名はロヴィス・ベッケンバウアー。弁護士である。

「私の家は代々ブリュール家の顧問弁護士を担当しております」

「ブリュール家ですか」

その家の名前をレオンハルトは知っている。同じ貴族、爵位も同じである。パーティーに出席した際、挨拶を交わしたことも一度や二度ではない。

「実は先日、アルベルト様がお亡くなりになりました」

「そうでしたか」

アルベルトはブリュール家の現当主である。しかし、ここ数年は病により社交界にもほとんど顔を出していなかった。

「心よりお悔やみ申し上げます」
< 16 / 29 >

この作品をシェア

pagetop