妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「セラ、もう終わったことだ。こうして無事なんだし、気にしなくても――」

「黙ってろ」
 ユリウス様がリュオンの言葉を断ち切った。
 ノエル様にも冷たく見つめられて、リュオンは気まずそうに目を逸らした。

「教えてくれ、ドロシー」
 ユリウス様やノエル様の視線を受けて、ドロシーは素人にもわかりやすいよう嚙み砕いた説明を始めた。

「そうね、水槽を想像してみて。水槽の最下部には絶えず水が湧き出る泉があるの。おかげで水槽からはいつも水が溢れてる。水槽の中の水は生命力で、溢れた水は魔力。あたしたち魔女は溢れた水の余剰分を魔力として使ってるから、どんなに魔法を使っても大丈夫ってわけ」

 彼女はぴっと人差し指を立てた。

「それを前提とした上で、リュオンが唱えた呪文を思い出してみなさい。『魔と生命を隔てる境は壊れよ』――要するにこの子は水槽そのものをぶっ壊して、生命力を丸ごと魔力に変換しようとしたの。あたしが禁じ手だって言った理由がわかったでしょ? この子がやろうとしたのは自殺よ。片方の《魔力環》が赤く変色してしまったのは身体からの警告。生命力と魔力の境目が曖昧になっちゃったから、このまま魔法を使ったら危険です、下手すりゃ死にますよって言ってるのよ」

 私は遠くなりかけた意識を気力で繋ぎとめた。
 全ては私のための行いだ。私には知る義務がある。
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