妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「実験の結果はどうだった?」
「全く平気だったわ」
「良かった。結婚してもキスもできないのは辛すぎる。子どもも欲しいし」
「!!? そ、それはまだちょっと早いわよ……」
 さらりと告げられた言葉に、私は火が出そうなほど熱くなった顔を両手で覆った。

 と言いつつ、想像したことはあったりする。
 たとえば私に似た女の子。リュオンに似た男の子――想像しては身悶えたことはリュオンには内緒だ。

「おれ猫飼いたいなー」
「だ、だからまだ早いわよ! まず家を買う資金を貯めないといけないし――」
「心配は要らない。いますぐ家を買えるくらいの貯金はある」
「えっ!?」
「一応これでも『大魔導師』なんで。バートラム様からは毎月十分な給与をもらってるんだ。いつかセラを探す旅に出るための資金にしようと思って、ほとんど貯金に回してたんだけど、正解だったな。そのまま結婚資金に回せる」
 リュオンはまた笑って、私の頬に手を添えた。

「いつ結婚する?」
 どうやらそれは彼の中では確定事項らしく、当然のような口調で言われた。

「……バートラム様たちとも相談したうえで、一年後……くらいには。あなたの妻になれたら良いなぁと。思います」
 頬に添えられた手に自分のそれを重ね、照れながら言う。

「猫を飼うのは私も大賛成よ。できれば黒猫がいいわ」
「いいけど、なんで黒猫?」
「猫になったユーリ様を撫でられなかったことが心残りで……」
 空いているもう一方の手を握り、心のうちで唇を噛み締める。
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