妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「目の前に可愛い猫がいるのに見つめることもできず、触ることもできない――あれは一種の拷問に近かったわ。だから、今度は本物の黒猫を飼いたい。その子が許してくれるなら顎の下をくすぐって、撫でて、お尻を叩いて――とにかく思う存分戯れたいわ」

「あははは。なるほど。じゃあできれば黒猫。無理だったら他の猫で」
「ええ、他の猫も可愛いもの。白猫、キジトラ、三毛猫……ああもう許されるなら全部飼いたい。でも猫屋敷になりそうだから駄目ね。たとえどんな猫にせよ、巡り会った運命のその一匹に愛情を注ぎましょう」

「……猫を飼ったらセラの愛情がそっちに全部いってしまいそうだな。やっぱり飼うのはナシで」
 リュオンはふいっと顔を背けてしまった。

「えっ、嫌よ! 飼いたい!」

 私は上体を起こし、伸ばした両腕の間にリュオンを挟んで敷布に手をついた。

 リュオンは覆い被さった私をびっくりしたように見上げた。
 それから、目を細めて笑う。

「……猫だけじゃなく、おれのこともちゃんと愛してくれる?」

 リュオンが両手を伸ばして私の頬を掴み、引き寄せる。

「誓うわ」
「ならいい、飼おう。楽しみだな」
「ええ、とっても」

 目を閉じて二度目のキスを交わす。未来の旦那様に、心からの愛を込めて。

 私たちの頭上ではいくつもいくつも星が流れていた。


《END.》
< 219 / 219 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

クールな年下男子と、甘い恋を。

総文字数/117,602

恋愛(学園)243ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「あづい……」 「大丈夫?」 あまりの暑さで倒れそうな私に、美少年が声をかけてきた。 彼は同じ高校に通う一つ年下の男子、成瀬漣里くん。 無口、無表情、無愛想。 三拍子そろった彼は入学早々、 上級生を殴った不良として有名だった。 てっきり怖い人かと思いきや、 不良を殴ったのはイジメを止めるためだったらしい。 話してみると、本当の彼は照れ屋で可愛くて。 気づけばどんどん、惹かれていく自分がいたんだ―― ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 【深森真白(高2)】 前向きで純粋。 深森食堂の娘。 × 【成瀬漣里(高1)】 クールに見えて照れ屋。実はかなりの甘党。 兄の葵は完全無欠な学校のアイドル。 ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2026/03/21 完結 ランクインありがとうございます!

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop