妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
バートラム様から聞いたユリウス様のお話は私を気鬱にさせた。
「……大丈夫か? ユーリに同情するのは結構だが、あまり感情移入しすぎるなよ?」
重苦しい空気をまとい、俯き加減に何も話さずにいる私を心配そうに見つつ、リュオンは鍵を取り出して別館の正面玄関の扉を開けた。
彼は鍵を渡されるほど信頼されているらしい。
「ええ。わかっているのだけれど……つい私の境遇と重ね合わせてしまうのよ。リュオンは私とユリウス様の過去が似ているから、ユリウス様の理解者となることを期待して私をこの屋敷に招いたのでしょう?」
正面玄関から中に入り、煌びやかな玄関ホールを抜けて大広間へと進みながら話を続ける。
二人分の足音が静かな館に響く。
大勢の使用人がいた本館に対し、別館に住んでいるのはユリウス様と弟のノエル様、それからリュオンと料理人のネクターだけ。
人の手が足りないはずなのに、別館の床は鏡のように磨き抜かれていた。
「まあな。付け加えるなら、おとつい溺愛していた犬のルチルが死んでしまって、ユーリが酷く落ち込んでるから。セラならその心の隙間も埋めてくれるんじゃないかと思った」
「そうなの……私の家では猫を飼っていたから気持ちはわかるわ。亡くなったときはしばらく立ち直れなかったもの」
三年前に亡くなった愛猫のことを思い浮かべ、しみじみと呟く。
気位が高くて、普段は触らせてくれなかったけれど、落ち込んでいるときや体調が悪いときはそっと寄り添ってくれるような優しい猫だった。
「愛犬《ペット》を失った悲しみを癒すのは難しいと思うけれど。少しでもユリウス様の気持ちが晴れるように頑張るわね」
「ああ。ユーリはおれにとって第二の主人であると同時に大事な友人だから。よろしく頼――」
「お帰り、リュオン」
不意に前方から透明な声が降ってきた。
「……大丈夫か? ユーリに同情するのは結構だが、あまり感情移入しすぎるなよ?」
重苦しい空気をまとい、俯き加減に何も話さずにいる私を心配そうに見つつ、リュオンは鍵を取り出して別館の正面玄関の扉を開けた。
彼は鍵を渡されるほど信頼されているらしい。
「ええ。わかっているのだけれど……つい私の境遇と重ね合わせてしまうのよ。リュオンは私とユリウス様の過去が似ているから、ユリウス様の理解者となることを期待して私をこの屋敷に招いたのでしょう?」
正面玄関から中に入り、煌びやかな玄関ホールを抜けて大広間へと進みながら話を続ける。
二人分の足音が静かな館に響く。
大勢の使用人がいた本館に対し、別館に住んでいるのはユリウス様と弟のノエル様、それからリュオンと料理人のネクターだけ。
人の手が足りないはずなのに、別館の床は鏡のように磨き抜かれていた。
「まあな。付け加えるなら、おとつい溺愛していた犬のルチルが死んでしまって、ユーリが酷く落ち込んでるから。セラならその心の隙間も埋めてくれるんじゃないかと思った」
「そうなの……私の家では猫を飼っていたから気持ちはわかるわ。亡くなったときはしばらく立ち直れなかったもの」
三年前に亡くなった愛猫のことを思い浮かべ、しみじみと呟く。
気位が高くて、普段は触らせてくれなかったけれど、落ち込んでいるときや体調が悪いときはそっと寄り添ってくれるような優しい猫だった。
「愛犬《ペット》を失った悲しみを癒すのは難しいと思うけれど。少しでもユリウス様の気持ちが晴れるように頑張るわね」
「ああ。ユーリはおれにとって第二の主人であると同時に大事な友人だから。よろしく頼――」
「お帰り、リュオン」
不意に前方から透明な声が降ってきた。