妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「……父上の許可が出ているなら文句は言えないけれど。少しでも兄さんを侮辱したら追い出すからね」
 ノエル様は刺すような目で私を見た。

 この館にネクター以外の使用人がいない理由がこれだ。
 三か月ほど前から引きこもり生活を始めたユリウス様を少しでも悪く言った者はノエル様が一人残らず追い出した。

「心得ております」
 私は軽く頭を下げた。

「ユリウス様にご挨拶したいのですが、いまどちらにおられますか?」
「サロンで本を読んでるよ」
 感情のない声でそう答えてノエル様は階段を上っていった。

「…………あまり歓迎されてはいなさそうね」
「事情が事情だからな……すまない」
「いいえ、わかっていたことだから大丈夫よ。これからノエル様に信頼していただけるように頑張るわ」
 そんなやり取りを挟んで、私たちはサロンへ向かった。

 大広間の右手にある一つの扉の前で止まり、リュオンが扉をノックする。

「ユーリ。今日から働く侍女を連れてきた。紹介したい」
 返事がない。

「ユーリ?」
 しばらく待っても、呼びかけてノックしても、反応なし。
 本に夢中になっているのだろうか?

「入るぞ」
 焦れたらしく、リュオンは扉を開けた。
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