妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「あなたは一人ではありません。皆がいます。皆があなたのことを心配しています。だからいまは何も考えず、ゆっくり休んで。もう眠る時間ですよ。大丈夫。大丈夫ですから――」
 言葉を重ねようとしたそのとき。

 それ自体が意思ある個体のように、ユリウス様の右手が急に跳ね上がって、私の手首を掴んだ。

「えっ」
 余計な真似をしてしまったせいで起こしただろうかと慌て――ユリウス様の表情を見て、その必要がないことを知る。

 ユリウス様は変わらず瞼を閉じていた。

 けれど、いままでとは違って、その眉間から皺が消えている。
 ただし、私の手をがっちり掴んだまま。

 眠っているせいか、ユリウス様の手は温かい。

「………………。えーと……どうしましょう?」
 これでは動けない。
 困ってリュオンに助けを求めると、彼は苦笑した。

「起きるまで付き合ってやってくれる? 椅子を持ってくるから」
「……ええ、構わないけれど」
 ……さて、ユリウス様はいつ起きてくださるのでしょう。
< 34 / 50 >

この作品をシェア

pagetop