妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
 椅子に腰かけ、ユリウス様が起きるまで待つ。
 尻の下に分厚いクッションを敷いているとはいえ、座りっぱなしというのは辛い。

 リュオンが気を利かせて持ってきてくれた本を読もうにも、利き手ではない左手でページをめくるのは地味に大変で、何度か本を落としそうになった。

 そもそも片手を握られた状態で集中できるはずもない。

 ユリウス様の顔色は青く、目の下には隈がある。
 できる限り寝かせてあげたい、そう願う気持ちはリュオンと同じ。

 でも、そろそろ限界だ。
 右腕はとうに痺れて感覚もないし、腰も痛いし、起きて貰えないかなあ……。

 祈るような心地でユリウス様のあどけない寝顔を眺めていると、不意にその長い睫毛が震えた。

 ――起きた!

「!」
 ど、どうしよう。

 長らくこのときを待っていたはずなのに、心臓が騒ぎ出す。
 ユリウス様の瞼が持ち上がり、紫の瞳がまっすぐに私を捉える。
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