妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「…………」
 寝起きのユリウス様は二、三度と瞬きを繰り返した。

 数秒後に現実を認識したのだろう、紫の瞳が見開かれたその瞬間。

 ユリウス様の身体は一瞬のうちに猫へと変化し、着ていた服がばさりと音を立ててソファに落ちた。

 一匹の黒猫と化したユリウス様はもぞもぞと動いて身体にまとわりつくシャツから抜け出した。

 それから四肢を突っ張って紫の瞳で私を見つめ、誰だお前といわんばかりに、ふしゃー!! と威嚇する。

 耳を横に寝かせるようにピンと張り、尻尾を膨らませている!!

 でも、女性である私が怖いらしく、黒猫はちょっぴり涙目で、おまけにガタガタ震えていたりした。

 凄い、どこからどう見ても猫だ!!
 人語は話せないようだし、これは猫にしか見えない!!

 ああああなんて可愛いの……!!

 私は感動に打ち震えた。

 愛猫家の一人としては、ついつい、ご機嫌を取ってその艶やかな毛並みを撫で回したくなってしまう。
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