妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「猫になったユリウスを見るのは久しぶりだな」
 ソファに座っていたリュオンが立ち上がってこちらへとやってきた。

「セラ、おれが呼ぶまで退室しててくれるか。人間に戻すための魔法陣は組み上げたが、それでも十分はかかると思う」
 神秘的な光を放つ金色の魔法陣が彼の周囲を取り巻いている。

 冗談のような大きさの魔法陣の中には直線や幾何学模様や文字に似た何かが異常なまでの密度で書き込まれていた。

 ユリウス様が目覚めるまでの間、リュオンはソファに座って目を閉じ、ひたすらこの魔法陣を構築し続けていた。

 国内に三人しかいない大魔導師であっても、魔法の解除には手間暇がかかる。

 リュオンの話によれば、人間を変身させる魔法は空間転移に匹敵する超高難易度の魔法。

 一般人にはその存在さえ秘匿された禁止魔法だ。

 全ての魔法が自由に使えた混沌の時代、変身魔法に失敗して怪物となった魔女が暴走して国を滅ぼしたり、変身魔法を軍事転用した国が敵国の人間を異形へと変えたため、変身魔法の使い方は魔法書や文献に載っていない。

 過去の悲劇を繰り返さないようレアノールでもロドリーでも変身魔法を記述した本は全て発禁本であり、発行者は例外なく処刑されている。

 魔女の家系に生まれた私でさえ変身魔法の実在を知らなかった。
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