妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
 ちょっとした探検気分で歩き出した私は、大広間の中央で足を止めた。

 首を傾けて頭上のシャンデリアを見上げる。

 続いて金の手すりがついた階段に近づき、人差し指でつーっと手すりの表面を撫でてみる。

 指には埃一つついていない。

「この屋敷に使用人と呼べる人間はネクター一人だけよね? リュオンは魔女として仕えながら従僕の真似事でもしているのかしら? それとも、定期的に本館から使用人が手伝いに来ている? そうでないと変よね。あそこの壺もシャンデリアもピカピカだもの。四人全員が力を合わせて掃除しないと、とてもこの清潔さは保てないはず」
 しんとした大広間で一人、首を捻っていると。

「おれが『窓を開ければ自動的に小さなゴミや埃がまとめて飛んでいく』という魔法をかけてるからな。掃除の必要がないんだよ、この屋敷も本館も」
 背後からリュオンの声がした。

「そんな便利な魔法があるの!? ブードゥー様の館にいた魔女はそんな魔法使ってなかったわよ!? 私を含めた侍女たちが毎日一生懸命、窓を磨いたり床を掃いたりしてたんだけど!」
 驚きながら振り向くと、リュオンは私の前で足を止めた。

「おれが独自開発した魔法だ。魔法書にも載ってない」
「良かった。もしロドリーでは一般的な魔法だったのだとしたら、ブードゥー様の館にいた魔女は魔力惜しさにサボっていたのかと恨むところだったわ……って、そんなことよりリュオン、ユリウス様はどうしたの? まだ五分も経ってないでしょう? 何か問題でもあったの? もしかして元に戻せなかった?」
 心配になって詰め寄ると、リュオンは急に私の手を掴んで見つめた。
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