妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

とある宮廷魔女の受難

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 その瞳に金あるいは銀の《魔力環》を持ち、人知を超えた魔法を操る魔女として生まれた者の中で、宮廷魔女に憧れぬ者はいない。

 富、名声、地位、権力。
 宮廷魔女となれば、それら全てを得られるのだから。

 宮廷魔女となる道は非常に険しいが、私は十六歳で官僚試験に合格し、二年に渡って下積み生活を送った。

 国内の主要都市に支部を持つ《賢者の塔》の総本部は王宮の南側。
 天高く聳え立つ王城を挟んでちょうど王国騎士団寮の対となる場所にある。

《賢者の塔》の支部や関連施設から相次いで魔力増幅アイテムが盗まれた事件に関与しているとして、イノーラが《国守りの魔女》の称号をはく奪され、身柄を拘束された一週間後。

 私は今日も今日とて《賢者の塔》の十三階にある自分専用の研究室に閉じこもり、新たな魔法の開発や研究に励んでいた。

 今日中に提出予定のレポート作成が一息をついたところで休憩を挟むことにした。

 二番目の妹が一か月前の私の誕生日にくれた、可愛らしいウサギが描かれた手作りのコップに茶葉を入れ、パチンと指を鳴らす。

 私レベルの魔女となると長ったらしい呪文は要らない。
 指を鳴らす、たったそれだけの動作で描かれた魔法陣はコップの中に適量の水を生み出した。

 さらにパチンと指を鳴らせば、水は一瞬にしてお湯へ変わる。

 茶色に変色したお湯がぐつぐつと煮えたぎるコップを資料が山積みされた机に置く。
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