妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「よっ、と」
 立派なクッションや背もたれがついている分、結構な重さがある回転椅子を両手で持ち上げ、窓際に移動させる。
 椅子に腰掛け、そのまま半回転してコップを手に取る。

 コップから立ち上る湯気がたちまち私の眼鏡を曇らせた。

 眼鏡を清潔な白い布で磨いて再び装着。

 綺麗になったレンズ越しに改めて窓の外、眼下に広がる風景を眺め、自分好みの熱々のお茶をゆっくりと飲む。

 誰にも邪魔されない、至福の時間。

 ――ここに至るまでは長く大変な道のりだった。

 ほうっと熱い息を吐きながら、翡翠色の目を細めてしみじみ思う。

 何しろ私は生まれつきコネがあるお偉いお貴族様とは違って平民の出だ。

 史上最年少記録に並ぶ十六歳という若さで官僚試験を突破した私に先輩魔女たちは冷たかった。

 中には不正な手段を用いたのではないかと囁く者もいた。

 要するに嫉妬である。

 昔、通っていた魔法学校でも同じような目に遭った。

 魔女しかいない魔法学校で学年主席を取ったら「平民の分際で生意気な」とお貴族様にネチネチグチグチ言われていびられた。

 すれ違いざまに肩を小突かれたり、頭上から水をかけられたり、教科書を隠されたり。

 女のイジメというのは本当に、ほんっと~~~に! 陰湿だ。
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