初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
私は隣に立つ彼を見ないまま、視線を落とした。

指先に触れる感触。

いつの間にか、彼の手が私の手を取っていた。

逃げようとすれば逃げられるはずなのに、不思議と動かなかった。

その手は、強くもなければ、優しすぎるわけでもない。

ただ、離さないという意志だけが、そこにあった。

私は何も言わず、そのまま立ち尽くす。

祝福の音に包まれながら。

――私は、この男の妻になった。

けれど、心までは渡していない。

そう、強く言い聞かせながら。
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