初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される

第2章 初夜拒否

夜の静寂の中、背後から小さな気配がした。

「――皇女」

振り返ると、そこにいたのは見慣れた顔。

「……セリオス」

思わず息を呑む。

彼は深く頭を下げ、すぐに顔を上げた。

「ご無事で何よりです」

その言葉に、胸がわずかに揺れる。

だが、すぐに彼は声を低くした。

「ですが――どうかお忘れなきよう」

一歩、距離を詰めてくる。

「心だけは、奪われてはなりません」

その言葉が、鋭く突き刺さる。

「あなたは、まだ我が国の象徴です。民は、あなたを待っている」

私は、何も言えない。

彼の視線が、さらに強くなる。

「……あの男は敵です」

はっきりとした断言。

逃げ場のない現実。

胸の奥が、痛む。

けれど――私は、ゆっくりと頷いた。

「……ええ」

それが、皇女としての答えだった。
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