初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
寝室の扉が静かに開いた。

振り向くと、そこに彼が立っている。

「……疲れてないか」

低く落ち着いた声。

私は一瞬だけ迷ってから、小さく首を振った。

「……大丈夫です」

静かな空気が、部屋を満たす。

互いに言葉を探しているような、どこかぎこちない時間。

彼はゆっくりと私に近づき、まっすぐに見つめてきた。

「君は、美しい」

その言葉に、思わず視線を逸らす。

こんな状況で、そんなことを言われるなんて思わなかった。

距離が、近い。

逃げようとするよりも先に、彼の手がそっと伸びてきた。

頬に触れる直前で、一瞬だけ止まる。

まるで、許可を求めるように。

「……今夜」

低く、静かに告げられる。

「君は、俺の妻になるんだ」

その言葉が、胸の奥に重く響いた。
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