初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
しばらく経ったある日。

煌びやかな灯りの下、夜会は賑やかに始まっていた。

音楽と笑い声が響く中、私は一人、静かに立っている。

けれど、その空気の中で、確かに感じる。

――視線。

無数の視線が、私に向けられていた。

好奇、嘲り、そして僅かな同情。

ざわざわと、小さな囁きが耳に届く。

「あの方でしょ? 先日滅ぼされた国の皇女は……」

「ええ、確かに美しい姫だこと」

「皇太子妃って言っても、戦利品でしょう?」

「皇太子殿下も、酷なことをなさるわ」

胸の奥が、じわりと冷えていく。

分かっていたことだ。

ここでは、私は歓迎される存在ではない。

ただの象徴。

敗れた国の、証。

私は何も言わず、視線を落とした。

この場に立っていることが、どこか現実ではないように感じられて――

ただ、静かに息を潜めることしかできなかった。
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